2018/05/25

the nameless place

Photo by Rachel Sussman

何年か前、ドレスデンに住む大切な友人を訪ねた時、画家であるパートナーの女性がまるで当たり前の事のように、私の為に描いた油絵をプレゼントしてくれた。心のこもった創作物を突然頂いた事にも感動したが、そこで初めて絵画を始めとする「形ある芸術」と「音楽」の違いに気づき、創作者自身によるものは世界にただ一つしか存在しない芸術はなんて素晴らしいのだろうと、ほとんど憧れに近い感情を持った。

音楽を形にするには楽譜や録音媒体など何らかのメディアに留めるしかないのだけれど、そうではなく、もしも…その場所に行かなければ絶対に耳にする事の出来ない形の音楽、その場所に行きさえすれば自ずと聴こえてくる音楽があったならば、と想像する。

音楽家がその場で演奏をする、それは確かにその場所に行かなければ聞けないあらゆるものがそこにあるのだけれど、そうではなくて、あくまで演奏されるのはその「形」によって、であるもの。途方もなく無名で、辺鄙なところにある、何千年も生きてきた古い樹のような音楽、、、夢のようなお話だけれど、そういうものがあったら、創れたら、と思う。

上の写真は、私が以前からとても心惹かれているレイチェル・サスマンという写真家のプロジェクトの「世界で最も長寿な生き物」に登場する、ウェルウィッチアという原始的な針葉樹(!)。ナミビアとアンゴラにのみ自生するそうだ。数万年前に北アフリカで起こった洪水によって運ばれてきて、砂漠に適応するようになったと考えられているそうだが・・・まさに、この樹のような音楽があったら・・・!果てしのない理想ではあるけれど、名もなきカリブー、名もなき樹、(彼らには名前があるのかもしれないけれど)それらに少しでも近づけるように、音楽を創って行きたい。

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