2021/05/19

Still Space



人生を通して特にアンビエント・ミュージックの作品をよく聴いてきた訳でもなく、アンビエントというものが結局どう言うものなのか、分からずにいます。単に「空間的な感じの、PAD音が中心にある心地よい音楽」と言うだけではなかろう事はわかるのですが・・・
 
しかしアンビエントとは何なのか分からずして「アンビエント的な音楽を作っています」と自己紹介している昨今、その行為自体がアンビエントだ!と思い、少しは自分なりにアンビエントに向かい合ってその姿をしかと見つめてみようと思い立ったのがここ数日。

ふと、ピアノ特殊奏法のワークショップの先生に教えていただいた芦川聡さん(先生と非常に親しかったそうです)の作品を思い出し、改めて彼の名曲 ”Still Space" を聞いてみました。

 

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時が止まる思い。どうでしょう、この音楽の儚さは。

ひとこと、またひとこと、心に秘めた話を聞かせてもらっているような。。寂しさや哀しみがどうしようもなく溢れてきて、そのまま音として置かれていってしまったような。

この音楽を聴いていて思い出すのは、娘が3歳くらいの頃のことです。

夕暮れ時に、公園遊びを終えて家に帰る途中、自転車に乗りながら娘が突然、「ママ、死なないでね」と言ったのです。びっくりしましたし、不吉なこと言う子だな・・と思ったのですが、それより何より、なぜそんな事を言ったのか不思議でした。

後になって、きっとあの時初めて「寂しさ」ひいては「死」を感じたのではないかな?と想像しています。

夕暮れの寂しさと、静けさと、自転車に乗るママと自分、いつかは無くなってしまうもの、、それらがきっかけになって、どうしようも無い寂しさを心で感じたのではないかな、と。

あの時の空気、それをこの”Still Space"と言う音楽にそのまま感じます。

あの瞬間に娘と私の周りにあった空気そのもの、空気全て、です。

消えてしまうもの、寂しいもの、そして今はまだ有るもの。芦川さんの音楽から、無くならないでほしい寂しさをどうしようもなく感じています。願わくば、そこに静止していてほしい。

 結局、アンビエントというのは何かという探求はやめにして、芦川さんの音楽を理解することに時間を使いたいと思います。