Ludovico Einaudi “Primavera”。3年前の演奏会のアンコール(連弾)の録音です。簡易的な録音の上に、ピアノの調律がなかなかトリッキーでして、顔をしかめる方がいても仕方のない音です。ですが、この録音は私にとっては特別なもの。単に記録として録ったもので、誰かに聞かせるつもりはなかったのですが、あの時忘れずに録音ボタンを押した私を胴上げしてあげたい。
この日は友人との2人演奏会でした。最後にアンコールで連弾をしようという話になったは良いが、合わせる時間もなく、当日のリハーサルで短時間だけ、何となくお互い遠慮したり苦笑いしたりしながら、何とも手応えのない合わせをしました。
私がprimo(高音部)担当でしたので、友人は「小西さんに合わせるから好きに弾いてね」と言ってくれたものの、その言葉を信用せず(ごめん)、本番も全く好きに弾くことは出来ず、それが音に如実に表れています。恐々としていて、どうにも硬い。好きに弾くには、ある程度、いや相当、鍛錬が必要なものです。ましてや連弾ですから。
この演奏が特別なのは、再現が不可能だからです。もう二度と起こることのない、音のように消えていってしまったものです。記憶だけがあって、それもまた薄れていきます。なのでせめて、ここに。
こんなに哀しい曲調で、Primavera(春)というのが、にくい。
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